アクティブラーニングを考える

~授業実践や雑感など(亀倉正彦)~

安永悟著「協同学習による授業デザイン:構造化を意識して」を読んで(1巻1章)

東信堂「アクティブラーニング・シリーズ」(溝上慎一総監修  2016年3月刊)
第1巻『アクティブラーニングの技法・授業デザイン』(安永悟・関田一彦・水野正朗編)
第1章「協同学習による授業デザイン:構造化を意識して」(安永悟・久留米大学)を読んで
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楽しみにしていたシリーズが全巻刊行されました。拙著は第7巻『失敗事例から学ぶ大学でのアクティブラーニング』ですが、私自身が経験したり見聞きしたりする事例や理論的知識には限りがあることから、シリーズ各巻からの学びを通じてさらに進化・深化させて参りたいと思い、ここに時々記します。ただ、書評などおこがましいですので、あくまでも「第7巻とのつながりを考える」ことを主眼としたいと思います。
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 ※末尾のリンクを更新(H28.3.24)

◆節構成
 第1節 アクティブラーニングの定義と技法、第2節 協同学習とは、第3節 協同学習の場づくり、第4節 協同学習を基盤とした授業づくり、第5節 まとめ:構造化と協同の精神、です。学びと気づきを2つに絞りまして以下、記します。

◆(1)協同の精神
 グループワークはアクティブラーニング型授業の一つの中核にあると思います。その基本的な精神、すなわちなぜグループワークをするのかを根幹のところから学ぶことが出来ました。本章の用語で説明します。
 「グループに依拠した学習法」(p.5)はアクティブラーニング型授業の一つの鍵となる重要なテーマになっています。「質の高い効果的なグループ学習の知識と経験」(p.3)が本章のテーマであり、そしてその効果を高めるのが「協同学習の理論であり方法」(p.6)だと述べ、これが本章全体を貫くメッセージになっています。その 協同学習には5つの基本要素(p.7)がありますが、これらが深い学び(=質の高い学習)をもたらす要になるのが「協同の精神」(p.8)です。協同の精神とは、「学習目的の達成に向け、仲間と心を合わせて、自分と仲間のために真剣に学ぶことを是とする信念」(p.9)です。
 第7巻では第6章(2節・3節)ならびに第2章(2節(1))の中で、この点について言及しました。すなわち「仲間と心が通い合わない」こと、「自分と仲間のために真剣に学ばない」ことをグループワークの失敗事例の基底的なトピックとして取り上げるとともに、これらを乗り越えて深い学びに向かうための解決策の一つを例示しました。

◆(2)構造化
 グループワークがどのようにすれば上手く行くかは、なかなか行き当たりばったりでは難しいものがあります。これを経験不足の教員でも比較的うまくできるようにしてくれる考え方が「構造化」だと考えています。安永先生のご説明は、単なるテクニック論に陥らず、なぜそうするのかという原理論がふんだんに散りばめられていて大変参考になります。
 「協同学習の技法と構造」(p.10)について大きく2つの「構造」について言及がありました。まずは「協同学習の基本構造」(p.11)であり、課題明示から始まる4つの流れを紹介しています。TPS(シンクペアシェア)やRR(ラウンドロビン)などの基本形をさらに一次元メタのレベルに引き上げ、原則論に近づけています。また、「構造化」として①「授業一コマの構造化」(pp.16-18)と、②「授業科目全体の構造化」(pp.18-20)についても、初年次教養科目を一例に挙げてかなり具体的に説明しています。こうした「構造化」の考え方はさらに分節化が可能で、例えば「自己紹介の手順」(pp.14-15)のみでもさらに構造化が可能なことを示しています。
 第7巻では、第2章(2節(2))では構造化が機能しない失敗事例について紹介しました。また、第5章では協同学習にとどまらない構造要因について、「構造(Structure)-行動(Conduct)-成果(Performance)」というツールキットを紹介しました。そして、第6章では、グループワークでの個人貢献を評価する難しさを解決するための、一つの「構造化」のあり方に触れました(pp.125-126)。

 以上です。分かりにくい点は、直接本書に当たってくださいませ。またご不明な点はお尋ねくださいませ。

「 アクティブラーニング・シリーズ」と拙著をどうぞよろしくお願いいたします。

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