アクティブラーニングを考える

~授業実践や雑感など(亀倉正彦)~

『PROG白書2016 現代社会をタフに生き抜く新しい学力の育成と評価』を読んで

新刊の『PROG白書2016 現代社会をタフに生き抜く新しい学力の育成と評価 -2020年大学入試改革を見すえて』(河合塾・リアセック監修 PROG白書プロジェクト編著、学事出版 2016.5.15)を読みました。書評というより、私個人の問題意識との関わりで考えたことを述べます。

 

「PROG白書2016」発刊のお知らせ | 株式会社リアセック

 

◆PROGとは、Progress Report On Generic Skillsの頭文字をとったもので、「コンピテンシー」と「リテラシー」の観点から大学生の知識・技能にはじまり、能力スキル、態度・資質を測定する評価ツールです。多くの大学で全学あるいは学部・プログラムレベルで採用されており、かなり標準テストに近づきつつあるテストで、弊学も活用したことがあります。産業界で実際に活躍している方々にも測定してもらい、その傾向との近似を測るアプローチが特徴的です。

 

◆高校・大学・社会へのトランジションは現代の教育における最もホットな話題の一つです。知識・技能・態度を多角的に評価できるところにPROGの高い可能性を感じています。近年に高校向けに実施した「学びみらいPASS」という測定ツールの調査結果から導出された8つの総合スキルタイプは、新入生を迎えて初年次教育を施していく大学人にとっても大変興味深いものでした。キャリア成熟度や高校難易度ランク別の調査結果は、大学以上に歴然と差が開いていて愕然とするものがありました。その上で、中等教育の現場におけるアクティブラーニングの意義について、改めて考える良い機会となりました。

 

◆本書は、調査結果が多角的に分析されていて、誰が何のためにこのデータを活用するのかを意識した細やかな配慮が随所に施されているので、とても読みやすく、学びが数多く得られました。とりわけ気になったのは「大学文系でのコンピテンシーの伸び悩み」でした。私自身まさしく大学文系でアクティブラーニングに関わっていることから、「下手なアクティブラーニング、休むに似たり」という言葉を想起し、襟を正しました。もう一つ興味深かったことは、学習態度との相関が見られたことです。「這い回るような、形ばかりのアクティブラーニング」からの脱却が昨今、大きな話題になっています。ALの本来の趣旨である「学生が自ら学びに向かう姿勢」へと舵取りを切っていく際の基礎資料の一つとして活用できるのではないかと思いました。

 

最後に、本プロジェクトメンバーの角方先生、成田先生、松村先生にはいろいろご指導頂いたことがあります。素晴らしい研究成果に感謝と御礼を申し上げます。

 

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