アクティブラーニングを考える

~授業実践や雑感など(亀倉正彦)~

ワンデイ・インターンシップ批判に応えて

最近、ある教育系の新聞記事で「ワンデイ・インターンシップ」への批判を目にしました。その記事によれば、「ワンデイ・インターンシップ」に対して、以下の3つ問題点を指摘し、これらがインターンシップの本義である「学生の職業観の醸成」「実践的な職業教育」に悖る(もとる)ものとして批判しました。

・一日で仕事を理解できるわけがない。
・名前を変えた「企業説明会」のために授業欠席する。
・企業は現在のインターンシップに良い人材を獲得するという目的以外を見出せない。

 

私は、インターンシップの専門家ではありませんが、1日で実施するインターンシップにも優れた取り組みがあると思っています。したがって、上述したインターンシップの本義に基づくことがあくまでも大事であり、「ワンデイ」という用語にあまり囚われるべきではないと思いました。私の考えている「1日で実施する優れたインターンシップ」には、以下の2種類のものがあります。

 

(1)二段階インターンシップ

  私は、将来のキャリアを決めるために学生のうちに実施するインターンシップは二段階式であると良いのではないかと思っています。第一段階は「興味関心を持つためのインターンシップ」です。まずはその業界に興味を持てるかどうかを確認するために実施します。企業による説明や現場見学・体験として1日で実施します。ここで興味を持った学生が比較的長期間にわたり第二段階の「仕事を理解するためのインターンシップ」に取り組み、さらに実践的な職業教育を受けます。いきなり長期間のインターンシップに挑もうとする学生が、十分に業界や仕事を理解していなかったため、それこそ1日で自身のキャリアとしての興味を喪失してしまい、その後のインターンシップ体験が苦痛になり、遅刻がち・欠席がちになり、本人にとっても、企業にとっても、大学にとっても三者にとって悲しい出来事になってしまった事例を耳にしたことがあります。それならば、お試しの1日インターンシップがあっても良いのではないでしょうか。

 

(2)教育向けのインターン(=産学連携アクティブラーニング)

  企業の業務は文字通り「1分1秒でいくら」のコスト計算をしています。産学連携授業で時間と人員の準備をお願いするのは心苦しいので、可能な限り訪問回数を減らすとともに、訪問までの事前準備に時間をかけることで、たった一度の訪問機会を充実した実践機会にするといった工夫をしてきました。「学生の職業観醸成&実践的な職業教育」の本義にはまるので、これを1日で実施するインターンシップと呼んでも差し支えはないのではないかと思っています。また、こうしたインターンシップは、最近増えてきている産学連携のサービスラーニング、アクティブラーニングとの明確な線引きがしづらいところです。

 

大切なことは、インターンシップは、大学(学校)と産業界が共同して学生を育てる機会ですので、双方のニーズと負担感を上手にバランスさせていくことではないかと思っています。今回ご縁があった企業が、10年後も20年後も、共に優れた学生を育て、そしてそうして育った学生を社会に役立てる関係であり続けられたらと心から願っています。

 

※「インターンシップ」(文科省等による定義)…「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」