アクティブラーニングを考える

~授業実践や雑感など(亀倉正彦)~

関田一彦著「アクティブラーニングを支えるグループ学習の工夫--協同学習の視点から見える実践の留意点」を読んで(1巻2章)

東信堂「アクティブラーニング・シリーズ」(溝上慎一総監修  2016年3月刊)
第1巻『アクティブラーニングの技法・授業デザイン』(安永悟・関田一彦・水野正朗編)
第2章「アクティブラーニングを支えるグループ学習の工夫--協同学習の視点から見える実践の留意点」(関田一彦・創価大学)を読んで
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楽しみにしていたシリーズが全巻刊行されました。拙著は第7巻『失敗事例から学ぶ大学でのアクティブラーニング』ですが、私自身が経験したり見聞きしたりす る事例や理論的知識には限りがあることから、シリーズ各巻からの学びを通じてさらに進化・深化させて参りたいと思い、ここに時々記します。ただ、書評などおこがましいですので、あくまでも「第7巻とのつながりを考える」ことを主眼としたいと思います。
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 ※末尾のリンクを更新(H28.3.24)

◆節構成
 第1節 今求められるアクティブラーニングの特徴、第2節 協同学習の特徴、第3節 アクティブラーニングの手法を入れた授業に協同学習の技法を組み込む、第4節 グループ活動の評価と振り返り、です。学びと気づきを2つに絞りまして以下、記します。

◆(1)社会的促進を育む相互交流
 本章の核心にあるのが「相互交流(Promotive Interaction)」(p.26-29,33,41)の概念です。その技法として「①復習ペアと②QQT(クイズ-クイズ-トレード)」(pp.30-33)の2つを紹介しています。両者の共通項として「教えあい、学びあう互恵性・肯定的相互依存関係(Positive Interdependence)」(p.33)と「そのゴールに向けた相互の貢献(努力)を意識し、確認し合うための責任の明確化 (Individual Accountability)」(p.33)の2つが挙げられていました。その後に「ポスターセッション」(pp.37-38)の高度な実践例が紹介されていて、自分の授業にも応用したいような大変示唆に富む内容になっていました。さらに、こうした活動がいかにして他者からの学びの深まりを促し、所期した学習目的を果たすかのポイントについて「建設的討論法」(p.39)などを提案しています。大学での学びを効果的にするための基本は批判的思考であり、自己の考えを他者との対話の中で相対化する作業は欠かせないことを改めて学び、確認しました。
 第7巻では、第6章(2節(3)&(4), 3節)の中で、「意見の強い押し出しにより他のメンバーの腰が引けてしまう」失敗事例などを紹介しながら、グループワークにおいて他者の意見や考えを尊重することについて考えています。また第1章(3節(1))で「最低許容行動」や「革新の阻害」など、チャレンジする姿勢を引き出す上での難しさを論じています。

◆(2)グループ学習の弱点
 本章は、グループ学習の弱点について、ジョンソンたち(2010)などに依拠して9つの問題(pp.34-35)を紹介しました。[グループの未熟 / 不適切なグループサイズ / ただ乗り / 集団浅慮など]。科目の学習目的ならびにALの実施目的を一般化しているのでここで詳細な論及は避けますが、第7巻との関わりではどれも大事な意味を持っているので、ここでは2点に絞り以下に述べます。
 「集団浅慮(group think)」について。第7巻では、第4章(2節(1))で「学習意欲」の失敗行動マンダラの第一円環で「集団浅慮」に言及しました。「集団浅慮」とは、例えばグループで討議していて、Aさんが意見したとき、「議論するの面倒だし、これで決めてしまえ」となってしまい、本来なら「三人寄れば文殊の知恵」になるべきはずのところが、却ってマイナスの学習効果になってしまうことです。
 「ただ乗り(Free Rider)」について、第2章(1節(1)ミニ失敗事例2)の中で「授業準備不足」(pp.26-29)の観点から、そして第6章(2節(5))で「2回以上に渡りグループメンバーを固定させる場合の欠席者対応」との関わりで触れ、対策としての「6つのルール」を例示しました。「ただ乗り」はその原因により様々なパターンに分類できるため、一般化して原因と対策を論じることが困難です。

 

 以上です。分かりにくい点は、直接本書に当たってくださいませ。またご不明な点はお尋ねくださいませ。

「 アクティブラーニング・シリーズ」と拙著をどうぞよろしくお願いいたします。

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